DATE
原 題 |
FIREFOX DOWN |
作 者 |
C・トーマス |
種 類 |
航空冒険小説 |
Story
操縦席の中でガントは、安堵の息をついた。2号機とのドッグファイトを終え、後は西側陣営の
制空権内に飛び込めば、この任務も終了する。
いろいろな物を犠牲にして、ソビエトの空軍基地からこのMig31を強奪した。しかし、自分に
は何が残るのだろう?。疲労のせいか思い広がる虚ろな考えを頭の隅へ追いやり、機体の再チェ
ックを開始する。
上空8万フィートの空はひたすら青く、地上の喧騒とは一切関係のない世界が広がっている。そ
の景色をガントは見回した。機体後部を写すミラーに目を向けた彼は想像し得なかった、あって
はならない光景を発見する。霧?いや燃料が漏れ出している!
「!」
どうやら、先ほどの戦闘で機体の一部を打ち抜かれたらしい。燃料タンクのゲージは急激にゼロ
を目指し始める。だんだんと落ちてくる高度計を確認しつつ、ガントは近辺の地図を確認した。
「どうやったら、こいつをアメリカに渡す事が出来る?」
燃料は数分程度しか残っていない状態で出来るのは……
今再び、壮烈なファイアフォックス争奪戦の幕が切って落とされた!
解説
あの「ファイヤーフォックス」から数年、あのM・ガントが帰ってきた。
クリント・イーストウッド主演で映画化された作品のダイレクトな続編です。東西冷戦の頃に執
筆された作品ですので、少々古く感じるのは辛い所ですが意外性とテンポの良さはまったく衰え
ているものではありません。十分、エンタテインメント小説としての資格は兼ね備えています。
次から次へと主人公に降りかかってくる困難、それを知恵と機転で乗り越えて行く様は、読書の
基本である「ページをめくる楽しみ」を充足させてくれる事でしょう。
さてそんな本書も一つだけ欠点が存在します。インパクトのある映像化がイメージに残っている
為でしょうか、どうしても頭の中で主人公の声が故山田康雄氏になってしまう所でしょうか。(^^;
出来るなら、C・イーストウッドで映画化して欲しかったんですけどねぇ。(笑)
さて実は、冷戦末期に本物のMIG−31は実戦配備されていたようです。現実の機体(フォッ
クスハウンド)と比べると、とんでもないスペックを誇る機体として設定されています。これなら
イギリスとアメリカが「盗み出したくもなるわなぁ」と(笑)
前作「ファイヤーフォックス」中で書かれていたスペックでは…
・ステルス機能
偵察機では存在しますが、ドックファイトのできる機体でステルス機能が搭載された機体は、その当時存在しなかった。
・ミサイルなどを発射する時にタイムラグが無くなる様に、思考制御装置を搭載
前作のオチにも使われた装置で、ちょっと困った代物です。(^^;
・最高速度マッハ5
・上昇限度12万フィート
はっきり言ってしまえば、こんな都合のいい戦闘機を設定すると、胡散臭いB級SFにしかならないんですな。しかし
きっちりとした冒険小説に仕立てる手腕はたいしたものです。
テンポの良い、サスペンスアクションに出会えるこの作品…いかがです?
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