「大魔王作戦」

ハヤカワ文庫版表紙(昭和58年発行:画:伊達誠)

DATE
原    題 Operation Chaos
作    者 P・アンダースン
種    類 ファンタジィ

Story
僕の名前はスティーブン・マチュチェック、元映画俳優で今は軍人だ。
え?どんな映画に出てたかって?MGM(メトロ・ゴールドウィン・マーリン)社のお抱え俳優で、ホラー映画 などで主演を張った事もある。大きな声じゃ言えないが、実は「狼男」なんだ。だから、特撮不要で主演を張れ た訳だ。しかし今ではアメリカ陸軍四十五師団所属の情報部大尉なんかをやっている。戦争さえ無ければ優雅な 生活を謳歌していたんだけどねぇ。
そんなある日、上官のヴァンブラ将軍から出頭命令が来たんだ。現在アメリカ本土に上陸している敵軍が戦略上の 重要地点を占領したので。僕に奪回の切掛を作れと言い出した。そんな無茶な!一人で出来る訳が無い。相手は魔 神まで擁した連中なんだぞ?いくら不死身の「狼男」だと言えども魔神相手に何が出来るって言うんだ!
へ?一人じゃないの?パートナー?しかも女性兵士ときたもんだ。おいおい、勘弁してくれよ…足を引っ張るよう な奴ならお断りだぜ?第十四師団のグレイロック大尉かぁ、碧の瞳、紅い髪、きりっとした顔立ち、めりはりのあ るボディラインは野暮ったい軍服には似合わないねぇ。
…まてよ?たしか十四師団って騎兵隊じゃなかったか?それもユニコーンの…ってことは彼女は魔法使いかぁ。 なるほど、魔法使いと狼男のコンビって事か、しょうがないね。うん。 これでも一応男だしね。むさ苦しいおっさんが相棒じゃなくてよかった。
それに上層部の命令には逆らう訳には行きません。それじゃなくたって「恐怖予防」のゲアス(一定条件を満たす まで強制力が発動される呪い)が強制力を施行している状態だから、普通の状態には程遠いし。命令を拒否しての 軍法会議なんか持っての他だ。それじゃ、やれるところまでやってみましょうか。

解説
舞台は1900年代中盤のアメリカ、しかしその世界のアメリカは私達の知っている それと違い、科学の代わりに魔法が重要な位置をしめています。人々は多少なりとも魔法が使えて、車はエンジンの 代わりに空飛ぶ箒を装着。軍隊では、部隊ごとに使役するモンスターが存在すると言う…。一度は想像した事のある 世界をユーモアたっぷりに描いています。本編内で主人公が軍隊の運用について、ひとくさり愚痴を言う場面は必見 といっても良いでしょう。
「大体、軍隊にバシリスク部隊なんぞいらないよ。近くにいかないと効力はないし、隊員は石化を防ぐためにアルミ ホイルを貼った防御服を着けなきゃいけないなんて…目立つ事この上ないじゃないか」(笑)
(思わず「おいおい、お前が言うか!」と突っ込みたくなるのは私だけではないでしょう)
基本にあるのは「2001年宇宙の旅」などで有名なイギリス人のSF作家アーサー・C・クラークの言葉です。
「充分に進歩したテクノロジーは魔法と見わけがつかなくなる」その言葉を、判りやすくかつ、楽しく具現化したの がこの物語です。ヒーローは俳優で、狼男の青年(少々おマヌケ)、ヒロインは赤毛で気の強い魔法使いの美女(で も可愛い)(笑)
この名コンビが、戦場、新婚旅行先、果ては異次元で冒険を繰り広げます。エンターテインメントを楽しむには打っ て付けの一冊がここにあります。
ファンタジィとライトコメディが一冊で楽しめるこの作品…いかがです?